26年前の 今朝、

26年前の 今朝、
父は畑でいちごを摘んだ。
嫁いでゆく娘に
食べさせるために。

 

父とは ずっと
あんまりいい関係ではなかった。

小1の夏
「あっ!帰ってきたあ!おかえり~!」と
飛びついていったわたしを
父は さっとよけた。

抱きとめるのではなく。

 

ガッシャーン!

私はガラス戸に飛び込んでしまい
大泣きに泣いた。

腕に入り込んだガラスのかけらを
取り除いて縫ったのは
もちろん 痛かった。

でも
抱きとめてくれなかった
そのショックは
もっともっと 大きかったし
ずいぶんと長引いた。

 

「おとうさんは
わたしのこと すきじゃないんだ」

 

 

結婚式の朝
父が摘んできてくれた
いちごを食べて
家を出た。

今まで育ててくれたことへ
感謝したけど
「わたしのこと すきじゃないんだ」
って まだ どこか
思ってた

 

「こんな子 産むんじゃなかった」と
祖母が言ったことが
父の心の傷に
なってることを
ずっとあとで知って

 

素質論を学んで,
父のことを
何も知らないことに気づいて

はじめて
父と向き合ってみたら、



知らないことだらけだった。

気難しくて
へそ曲がりで
すぐに怒り出すし
全然話が通じないって
思ってたけど、

じつは、
おちゃめだったり
ふざけるのがすきだったり
やると決めたら
行動がすばやい!

 

そして
ほんとは

やさしいことも。

口下手で 人付き合いは
あんまり上手じゃなかったけどね。

 

父がいなくなって
2度目の春が過ぎ
今年も実家の畑には
いちごが赤く実る。

 

おひさまをいっぱいあびた
とうさんの いちごが。

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